その2 レゾ の 支配のはじまりは?

            ・つらつらと考える__レゾとゼルガディスの出会いを

 ゼルの回想には両親といったものは出てこないから、親は、彼が物心つく頃までにか、幼年期の終わり頃までには亡くなったとしよう。親が生きている間は、レゾはゼルに手を出せない。というより、レゾが、まだ乳臭くて泣いては眠るだけの赤ん坊に、関心を持つとは思えない。自分の血をひく男の子、という一点を除いては。

 レゾの研究所兼邸宅は、他人に干渉されない、不便な郊外にあったはずだし、しばしば留守にして諸国を遍歴してるから、レゾが幼年期のゼルと一緒に暮らしたことはないだろう。幼い男の子と両親は、市井でつつましく目立たずに暮らしていたにちがいない。
やがて男の子が一人で身の周りのことが出来るようになった頃(5,6歳か)、親は相次いで亡くなる。

 レゾは、その知らせを得ていても、すぐには男の子の前に現れない。
人を<支配>するには、その人が無力さと絶望感にうちひしがれているときに、救い手として現れるほうが効果的だと、知っているから。
 レゾはころあいを見計らって−男の子が路頭に迷い、空腹から盗みを働いて、役人につきだされでもしたときに−知らない大人たちに囲まれて、その足元でうずくまって泣く男の子のビジョンを脳裏に映して、< もうそろそろいいでしょう >と口の端に笑みを浮かべて立ちあがる。男の子を庇護する者として、ゆっくり登場する。

涙もかれた男の子の耳に錫杖の響きが遠くから聞こえてくる。すると、周りの大人たちが、その響きの主へと視線を移し、囁きあう。空気が変わっていくのを、男の子は感じる。

       「レゾ様が…!」 「なぜ急に?」 「こんなところへ…?」 

               [……『レゾ』…?(誰?)] と男の子。

 レゾは、へたり込んでいる男の子の前に進み出て、片ひざをついて言う。

「君を見つけだすのが遅くなってしまって、申し訳なく思っています。 かわいそうに。
私は、君の※※(男の子にはよくわからない。そふ?そうそふ?)にあたる、レゾといいます − 君が生まれたときに一度会っているんですよ。
これから、私と一緒に暮らしてくれますね? ゼルガディス。」

 男の子を囲んでいた大人たちは、驚き、子どもへの非礼をわびる声をあげる。
 男の子はびっくりしてレゾを見上げ、そして思う。
[ この人が…? ぼくの…? ぼくを守ってくれる人になるの…? ]

 見開いた瞳に、レゾの慈愛に満ちた笑顔が映る。
                      それは、レゾの<支配>の始まり

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