その1
・なぜ レゾは ゼルに 魔法(呪い)をかけたのか・
「賢者の石を探す手伝いをさせるため」というのは表の理由。
これだけでは、なぜそれがゼルでなければならないかの理由にならない。
( 何も身内をあんな目に合わせなくたって…?)
いや、ゼルが自分の血を引くものだからこその所業ではないか。
リナ 「いつからレゾと知り合いなの?」
ゼル 「生まれたときからさ」
これは意味深なセリフ。多分、ゼルが生まれたときに誰かがレゾに言ったのだろう。
「まあ、レゾさまにそっくりな男の子ですよ」
実際に似てたかどうかは問題ではない。(一般的なお世辞かもしれない)
が、レゾにとって、自分と同じ血が流れながら健康な身体を持って生まれてきた男の子が許せなかったのではないか。だから、彼から完全な身体を奪うことを、無意識に、彼を自分と同じ(一種の不具者)にする機会を待っていたのではないか。(ひそかな憎しみと嫉妬)
あるいは、他人の病を治すことはできても、自分の眼を開かせることができない理不尽な運命に対する復讐だろうか。単に、自分と同類をつくりたかったのかもしれない。同じように、己の宿命を憎む者を。
もしくは、自分と血のつながりがあり、同性の、つまり自身の延長であり、投影同一視の対象にほかならない男の子を、自分と同じ側に置いておきたかったのではないか。(愛という名の支配)
・・上記のレゾに対する推測が正しいとするなら、レゾの直接の子供(正式に結婚したのか落し種だったのかわからないが)は、「娘」だったことになる。
レゾと同性でないことで、レゾにとって同一視の対象たることを免れ、魔法(呪い)をかけられずに済んだのだから。
つまりゼルにとって、レゾの身内に(初めての)男の子として生まれてきたことが、理不尽な運命の始まりなのだ。
さらに妄想すると、男親の形質は娘に、女親の形質は息子に伝えられる法則からすれば、レゾの形質→娘→その息子(ゼル)と伝えられたと考えるのがよく レゾはゼルの祖父ということになる。この間にもう一世代「娘」が入ってレゾは曽祖父ということになると、レゾの形質はゼルに伝わらない。
自分の体を治すすべを探して諸国をめぐり、病人を治すかわりに(結果として)悪人退治をしている(笑)ゼルは、レゾの半生をなぞっているといえる。あきらめのつかない性格も受け継がれている。
いずれにせよ、ゼルをあの体に変えることができて、レゾは嬉しかったに違いない。 が、満足はしない。なおも自分の目を開かせることをあきらめられなかったのだから。
…自分が親になってわかったことのひとつは、たいていの親は、子供に何かしら呪いをかけるということだ。その最たるものは、良くも悪くも「生きろ」という呪いであり、その一言ならまだしも、たいていはその前に「自分(親)の人生の延長を」とか「自分(親)の果たせなかった夢の実現のために」(「巨人の星」か?)という余計な文句がついたりするから厄介なのだ
ゼルにかけられた「魔法」は、普通の親が子供にかける一種「呪い」に似た感情に基づいていて、この
「魔法」は「呪い」、あるいは育ての親の「支配」と読みかえることもできるのではないか。
そして、キメラ(合成人間)の体は、その結果としての「病」とも読める。
魔法をかけた術者が死んだら、魔法が解けるというのが「お約束」なのに、ゼルにかけられた魔法が解けないのは何故か…?。それは、子どもを支配していた親が死んだからといって、子どもがすぐさま自由になれるわけではないのと同じ理由ではないか。
つまり、魔法をかけられた子ども自身が病を発動させているから。
だから、ゼルにかけられた魔法を解くカギは、彼自身のなかにあるのではないかと、私は想定している。 これは、「世界中を捜しても見つからなかった青い鳥は、なんと、おうちの中にいました」という物語の法則からしても、あっているのではないか。
そういうコードを用いて、ゼルの物語を読み解いていきたい。 |
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