【元気娘と魔剣士】 その9 <人の力、魔の力> |
騎士団がゼルガディスの屋敷に来てから、4日目の朝を迎えました。 朝から厚い雲が空一面に広がり、真冬に逆戻りしたような冷気が、辺りを包み込ん でいました。騎士たちの吐く息が、あちこちで白い靄のようです。 昨夜遅く、ゼルガディスの魔法を封じることに成功した報告を聞き、今日で決着を つけるべく、意気揚々と出発したのでした。 その頃、屋敷では、ゼルガディスがいつもと違う自分を訝しがっていました。 目が醒めてからというもの、何だか身体から力が抜けているような感覚を覚えてい たのです。力と言っても、体力的なものではなく、いきなり魔力が消失したような 感じでした。まるで、キメラになる以前の頃、、、いえ、もっと昔、魔法というものを 知らない、ただの少年だった頃のように。 「どういうことだ、これは……」 戸惑いながらも、ゼルガディスは光明(ライティング)を唱えてみました。しかし、手の 中に光は生まれません。 「女ならともかく……何故急にこんなことになるんだ?」 「ゼルガディスさん、大変です!外に騎士団が……、どうかしたんですか?」 駆け込んできたアメリアが不思議そうな顔で、茫然と立ちすくむ彼を見ています。 「あ…いや、何でもない」 「そうですか?何か、様子が変ですよ」 「そんなことないさ。…で、騎士団がまた来たって?」 「はい!門のすぐ外に、うじゃうじゃと。でも、門より中には入ってこようとは してません。こちらが出て行くのを待ってるみたいです」 「そうか…。肝心のゼロスはいたか?」 「いえ、今はまだ見かけませんでした」 『もしかして、これは、ヤツの仕業か…!』 「ゼルガディスさん?」 「あ、ああ。そうだな、連中だけなら放っといていいだろう」 「え?でも…」 「待ちかまえている中に、わざわざ行ってやる必要はないさ。2日続けて散々な 目に遭ったから、用心して入ってこないんだろうよ。気にせず放っておけ」 「それでは困りますね」 『ゼロス(さん)!!』 「おや?アメリアさん。いつの間に帰ってらしたんです?僕のように空間を渡り でもしない限り、こんなに早く帰れないはずですが」 素早くゼルガディスの横に移動したアメリアは、ゼロスをビシッ!と指差し、胸を 張って高らかに言いました。 「それは勿論、私とゼルガディスさんの愛の力です!」 ――しぃぃーーーーーーーぃん―― アメリアの言葉が響き渡った後、世界の全ての時間が止まったかのような沈黙が、 深く、重く、部屋中を支配しました。ゼロスは、いつもの笑顔を張りつかせたまま 凍ってますし、ゼルガディスも、焦点の合わない目をして固まっています。 「えっ?えっ?2人ともどうしたんですか?」 アメリア一人だけが、訳がわからないと言った顔で焦っています。 「ゼルガディスさん!しっかりしてください!」 彼の腕をつかんで揺さぶっても、まだ夢から醒めないような、ぼーーっとした顔が 虚ろに彼女を見ているだけです。 「ゼルガディスさんってばぁっ!」 困りきったアメリアの声で、ようやくゼルガディスが正気を取り戻しました。 しかし、衝撃はまだ残っているようで、彼女を見る目に落ち着きがありません。 「大丈夫ですか?一体どうしたんです、突然」 「ア、アメリア。おまえ、自分が何を言ったか、わかってるのか?」 「え?私、何か変なこと言いました?」 きょとんとした大きな瞳が、ゼルガディスを見つめ返しました。 「い、いや。わかってないのならいい…」 彼女の口から、まさかそんな言葉が出るとは思わなかったので、思わぬショックを 受けたのですが、アメリア自身には、どうやらその自覚が無いようでした。 「ゼロスさんも固まっちゃってるんですけど…」 言われて目を向けると、ゼロスの方がショックが大きかったのか、未だ硬直状態で した。張り付いた笑顔の唇の端が、ピクピクしている所を見ると、死んでは無さそ うですが、、、。 「…そうか!」 ゼルガディスが、ポンとひとつ手を打って得心したように言いました。 「こいつは魔族だ。魔族は、喜びとか愛情と言ったものに弱い。人間の負の心を 糧にしているのだからな。おまえの言葉が、ゼロスにとっては大ダメージだっ たんだ」 「何で私の言ったことがダメージになるんですか?」 「それはだな、その、…アイノチカラ…と……。とにかく続けるんだ!アメリア!」 「はい!ゼルガディスさんっ! 〜〜人生って素晴らしい〜元気、元気、元気がいちばぁ〜ん〜〜」 満面の笑みを浮かべながら、アメリアがゼロスに向かい攻撃(?)を始めました。 ゼロスと言えば、顔面蒼白で引きつっていたのですが、さすがは獣神官、アメリア の特殊攻撃から何とか立ち直りました。 「い、今のは、ちょっとききましたね……」 「ゼロスさん!今からでも遅くはありません。魔族なんて、因果であこぎな稼業 はやめて、真っ当な人生に戻りましょう!」 「はぁ……そう言われても困るんですけど…(汗)」 「さぁ!私と一緒に、人生の素晴らしさを歌いましょう!」 「そ、それは遠慮しておきます。僕の目的はあなたじゃありませんから、これ以 上時間を無駄にするわけにもいきません。そこで大人しくしててくださいね」 そう言って、ゼロスがアメリアを一瞥した途端、彼女の四肢は拘束されたように、 動けなくなったのです。 「なっ…!」 「アメリア!」 ゼルガディスが駆け寄ろうとしても、彼女の周りには、目に見えない結界が張って あり、傍に近付くことが出来ません。 「おっと、アメリアさんは魔法もお上手ですから、おしゃべりの出来ないように しておかければいけませんね」 「貴様!何のつもりだ!!」 「さて、ゼルガディスさんは僕と一緒に来ていただきます。外で騎士団の皆さん がお待ちかねですからね。…魔法の使えないあなたになら、普通の人間にでも 何とか相手が出来るでしょうから。…ああ、剣を取り上げるつもりはありませ んから、お好きに抵抗して結構ですよ。簡単に終わってしまうと言うのも興醒 めですし」 「魔力が消えたのは貴様の仕業か!?」 「勿論。僕以外にそんなことが出来るわけがないでしょう?」 「何をさせようと言うんだ」 「それはあなた次第です。騎士たちと戦うか、それとも戦わずして捕らわれの身 となるか。まぁ、捕らえられた場合には、楽しい未来という訳にはいかないで しょうが、命の保証はされますね。とは言え、ゼルガディスさんが、そんな道 を選ぶとは思えませんが。抵抗するのであれば、今までのように手加減は無理 だと思いますよ。何しろあちらはやる気満々ですからね」 「どちらにしても、おまえの思惑通りと言うわけか」 「そう言うことです。では、行きましょうか。舞台では主役の登場をお待ちかね ですよ」 ゼルガディスは振り返りました。視線の先には、アメリアの訴えるような瞳があり ました。何か言おうとしているのですが、その声は届きません。 「心配するな。何とかしてみせるさ」 そう笑って告げて、ゼルガディスはゼロスと共に屋敷から出て行ったのでした。 騎士団の見守る中、正面の大扉が開き、ゼルガディスが姿を現しました。 静かな足どりで、先頭に立つハドレィの元へと真っ直ぐ歩いて行きます。 「そこで止まれ!」 ハドレィの声が響き、騎士団との距離が10mほどの所でゼルガディスが立ち止ま りました。 「これが最後だ。魔剣士よ、あくまで我等と敵対すると言うか?」 ゼルガディスは、彼等を正面から見据え、激昂するでもなく、むしろ静かな口調で 言葉を返しました。 「俺は、今も、これから先も、あんたたちと争う気は無い。あんたたちが黙って ここから立ち去るなら追うつもりも無いし、まして、町の人間たちに、危害を 加えるつもりも無い。俺が今望んでいることは、心を預けられる相手と、ここ で、静かに生きていくことだけだ。だが、俺の言葉が信じられないと言うのな らば、俺は、自分が守るべきもののために戦うことを選ぶ」 「守るべきもの、だと?」 「そうだ。長い間探し続けて、ようやくこの手に掴んだもののためだ。 あんたたちが、自分が信じるもののためにここへ来たように、俺も、俺の信じ るもののために戦う。人間として生きて行くために…!」 そう語るゼルガディスは、残酷な魔剣士と呼ばれた欠片も感じられず、何物にも左 右されることのない、強い意志を持ったひとりの男でしかありませんでした。 過去に自分を苛み続けていた怒りや苦しみ。アメリアと出会ってからの悩み、戸惑 い、、、。迷う心すらも糧として、彼自身を変えていたのです。 他人を受け入れることを知らなかった頃には、生も死も、彼にとっては無意味なこ とでした。何人、何十人殺しても心が動かされることは無かったし、喩えこの世界 が滅ぶときも、全てのものを嘲笑っているだけであったかもしれません。 けれど、彼は守るべきものを見つけたのです。何と引き換えにしても、何を失って でも守りたい、ただ一人を。 ハドレィは、ゼルガディスの眼差しの強さとその言葉に、自分が今まで思い描いて いた『魔剣士』とは、違う印象を感じ取っていました。彼が抱いていたゼルガディ スのイメージは、人を殺めることを何とも思わない、冷酷で残忍な魔道戦士の姿で した。しかし、実際はどうだったか。確かにゼルガディスの魔法は強力で、騎士た ちも魔道士たちも歯が立ちませんでした。もし彼が噂通りの『残酷な魔剣士』であ れば、良くて敗走、最悪の場合、全員がこの森の中で屍を晒すことになっていたか も知れなかったのです。なのに、ゼルガディスは彼等を諦めさせようとするだけで、 決して命を奪おうとしませんでした。 「そなた、一体……」 ハドレィの心に躊躇いが生まれていました。攻撃の号令を待つ騎士たちが、不審に 思うくらいの時間が流れても、無言のまま、ゼルガディスと相対するばかりでした。 「おや?どうしたんですか?」 「ゼロス殿!」 「彼の魔力を封じている今がチャンスですよ。あなたの使命を忘れたわけではな いでしょう?」 「無論、承知している。だが……」 言い淀むハドレィに、ゼロスは僅かに顔をしかめましたが、すぐにいつもの表情に 戻り、なおも促しました。 「では、躊躇する理由は無いはずです。皆が命令を待っていますよ」 「うむ…そうであったな。騎士として、王命を果たすことが何よりの務め。 指揮官たる私が、個人的感情に捕らわれている場合では無いな」 ハドレィは剣を抜き放つと、馬上から全軍に向け号令を発しました。 「全力を持って魔剣士を攻撃せよ!怖れることはない。ヤツは魔法を封じられた! 魔剣士の生死は問わぬ!我等が力を思い知らせてやるのだ!」 指揮官の檄で、騎士たちは一斉に門を通り抜け、ゼルガディスに向かいました。 いきり立った何人かが、一気にゼルガディスへと斬りかかります。 「覚悟しろ!この化け物めっ!」 白刃が、ゼルガディス目がけて振り下ろされました。 ザシュッ! 血飛沫が上がり、斬りかかった騎士の一人の右腕から剣が落ちました。 ゼルガディスのブロードソードが一閃し、騎士の上腕部を切り裂いたのです。 しかし、それで怯む騎士たちではありませんでした。次々と斬りかかってきます。 「もらったぁっ!」 前方に気を取られたゼルガディスの背後から、長槍が彼の身体へと突き刺さり… ガキィッ! 「な、何ぃっ!?」 白いマントと、その下の衣服を切り裂きはしたものの、ゼルガディスの岩の肌は、 傷一つなく、槍の穂先が弾き返されました。 「残念だったな。そんな物じゃ、俺に傷を付けることは出来ないのさ」 驚愕の表情を浮かべた騎士にそう言うと、空いた左手で槍を逆手に握り、そのまま 騎士の腹部を強く突きました。呻き声と共に倒れたのを一瞥して、再び前方の相手 と剣を合わせています。ゼルガディスの剣技は彼等を完全に圧倒していました。 騎士団は、彼を包囲しているものの、一人また一人と数を減らしていきます。 「意外と手間取りますね。所詮、普通の人間ではこの程度ですかねぇ。 仕方ない、僕が直接お相手しましょうか」 面白くも無さそうに呟いたゼロスが姿を消したのは、既に全体の半数程が倒され、 膠着状態になり始めた頃でした。 「どうした、かかってこないのか?」 ゼルガディスが疲れも見せず、取り囲む騎士たちを挑発するように笑ったときです。 「やはり人間程度では、あなたのお相手は勤まらないようですね」 「やっと出てきたか……ゼロス!」 「ゼロス殿!」 「ハドレィさん、やはり、あなた方では役不足でした。魔法を封じ、数で押せば どうにかなるかと思ったのですが、この程度で、ゼルガディスさんを本気にさ せることは無理なようですね。あなた方はここで退場していただきますよ。 これ以上この場にいても邪魔なだけですから」 「何を……?」 ゼロスがゆっくりと右手を上げ、ハドレィを指差すような仕種をした途端、眩しい 光の線が、彼の頭部を貫きました。半瞬後、熟した石榴のように弾け飛んだ頭部を 失った身体が、馬上から崩れ落ちる音だけが、異様な静けさの中に響きました。 騎士たちは言葉も無く、ゼルガディスですら、その無残な最期に嫌悪感を隠しきれ ませんでした。 「さて、面倒事は、さっさと片付けてしまいましょうか」 そう言いながらふわりと宙に浮かび上がると、顔色ひとつ変えず、再び右手を上げ、 今度は水平に腕を動かしました。ゼロスの動きに合わせ、その先にいた騎士たちは 激しい爆発と共に、訳もわからないまま命を奪われていったのでした。 「やめろ!!おまえの目的は俺だけだろうが!」 ゼルガディスの叫びも全く意に介せず、ゼロスの殺戮は続きました。動くものが、 ゼロスとゼルガディスの2人だけとなるまで、、、。錆びた鉄のような血の匂いが 辺りを覆い、もはや人間の形をとどめない肉片だけが散らばっていました。 「やれやれ、こんなことなら妙な趣向など凝らさない方が面倒くさく無かったで すね」 「…貴様…!」 「あなたの意志で、こちら側に付くと言うのはどうやら無理のようですね。 あの方のご希望通りでは無いのですが、仕方ありません。とりあえず、あの方 の元にお連れして、その後はお任せすることにしましょう」 「ふざけるな!誰が貴様の言いなりになどなるかっ!」 「そうでしょうね。では、気の済むまで抵抗してください。でも、お相手するの は僕ではありません。……どうぞ、こちらへ…アメリアさん」 「…!!」 ゼルガディスの前に現れたのは、結界に捕らわれていたはずのアメリアでした。 「アメリアに何をした!!」 「大したことじゃありませんよ。ちょっと、僕の人形になっていただいてるだけ です。何でも言うことを聞く、ね。……さ、アメリアさん、思う存分にやって ください。殺さない程度にね」 ゼロスの言葉に促され、アメリアがゼルガディスに向かい突進してきました。 「はあぁぁっ!」 何の躊躇いも無く、拳を振り上げ、蹴りを繰り出します。彼女の体術は見事なもの で、パワー・スピード共に常人を遙かに上回っていました。 「よせっ!アメリア!」 ゼルガディスは相手がアメリアであるだけに剣で反撃する訳にもいかず、ただ彼女 の攻撃を避けるだけでした。 「しっかりしろ!俺だ!わからないのか!?」 隙を捕らえ、彼女の両手をつかむと、ゼルガディスは必死に訴えました。しかし、 その声は届かず、それどころか、つかまれた腕を振りほどこうと、アメリアが体を ひねりながら蹴りつけてきました。それに気付いたゼルガディスは、慌てて身体を 離し、距離を取りました。もし彼の身体を力一杯蹴ったとしたら、彼女の足が無事 では済まない――そう気遣った故の行動でした。 しかし、距離を取ったことで、アメリアに魔法での攻撃に転じるきっかけを与える ことになってしまったのは、何とも皮肉な結果でした。 「烈閃槍(エルメキア・ランス)!」 精神にダメージを与える光の槍が、ゼルガディスへ向かって放たれました。素早く 横へ飛んで避けたものの、積極的に反撃の出来ない彼は、確実に追い詰められてい ました。 「霊縛符(ラファス・シード)!」 攻撃魔法をことごとく避けられ、ゼルガディスの動きを止められないと気付いたか、 アメリアが呪縛魔法を唱えました。白魔法は、治癒(リカバリィ)程度しか使えないゼル ガディスには、この呪縛から逃れる術はありません。声は出せるのですが、身体の 自由は全く効きませんでした。 「アメリア!目を醒ませ!」 しかし、彼女はゼロスに操られるままに、虚ろな目をゼルガディスに向けるだけで した。 「さあ、アメリアさん。これをどうぞ」 ゼロスがアメリアに手渡したものは、禍々しい光を放つ、1本の短剣でした。 「ゼルガディスさんの身体には、普通の剣では傷ひとつ付けることができません からね。でも、この短剣は僕の魔力を込めたもの、まぁ、僕の一部のようなも のですから、いくらロック・ゴーレムの岩肌とは言え、易々と切り裂くことが できますよ」 「ゼロス…!」 「いやぁ〜、何とも劇的ですね〜。愛する者の手で血にまみれるゼルガディスさ んの姿を思うだけで、何とも言えずわくわくしちゃいますよ」 「この、変態野郎っ!」 もはや、ゼルガディスには為す術がありませんでした。短剣を手にしたアメリアは ゆっくりとゼルガディスに近付いてきます。 「アメリアさん、一度でけりを付けちゃダメですよ。少しずつがベストです。 …そうですねぇ、まずは右腕なんかいいですね」 彼女の右手が翻り、短剣がゼルガディスの右腕を切り裂きました。流れる血が、上 腕から手首へと流れ、剣を伝って地面に赤い染みを作りました。 「次は、左腕を」 アメリアは容赦なくゼルガディスに剣を振るいました。ゼロスに言われるままに。 やがて、ゼルガディスの身体は、何ヶ所もの傷から流れ出す血に染まり、急激な失 血で、倒れそうな身体を片膝を付き、剣で支えているのがやっとの状態でした。 「…アメリア……俺の声が聞こえないのか……!」 何度語りかけたときか、ゼルガディスは気付きました。さっきまで、人形のように 無感情だった彼女の目から、涙が溢れていることに。 『身体の自由は捕らえられていても、心は闘っているのか…!』 彼が思った通り、アメリアの意識は自分自身を失ってはいませんでした。けれど、 身体はどうやってもゼロスの呪縛から逃れられず、言われるままに自分のこの手で ゼルガディスを傷付けているのです。身体と心の葛藤が涙となっていたのでした。 「しっかりするんだ……おまえはあんなヤツに操られるほど弱くはないはずだ。 取り戻せ…おまえ自身を…!」 ただひたすら、ゼルガディスはアメリアに語りかけました。今の彼に出来ることは それだけでした。きっと打ち破れるはずだと、彼女を信じていたから。 「さて、お遊びはこれくらいにしましょうか。ゼルガディスさんの苦悩もたっぷ り味わえましたしね」 「アメリア!」 「心配しなくても、アメリアさんはすぐ楽にして差し上げますよ。あなたのとど めを刺した後にね。自分の手であなたを傷付けたことは、彼女にとっては耐え 難いことでしょうから、それをゆっくり堪能させていただきますが。 では、さようなら。『人間』のゼルガディスさん」 〜その10へ続く〜 |
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