【元気娘と魔剣士】 その7 3 <我が家へ> |
翌朝、目が醒めると、アメリアは自分の家に帰ってきていました。 どんな魔法なのかはわからないけれど、ゼルガディスの言った言葉は本当でした。 アメリアは急いで父親の元へ駆け付けました。 「父さん!」 父親は信じられないと言った顔で、驚きのあまり固まっています。しかし、数瞬後 には、幻などではなく、本当に自分の前にかわいい娘がいることを知り、大喜びで 彼女を抱きしめました。 「おぉっ!アメリア!よく無事で帰ってきてくれた…! わしは、もう、心配で心配で……!」 「ただいま、父さん。……ごめんなさい、心配かけて……」 父親の大きな胸の中に抱かれたとき、アメリアに、家に戻ったという実感が込み上 げてきました。夢にまで見た自分の家、そして大好きな父親との再会。 それから10分以上も、二人はしっかりと抱き合ったままでした。 ようやく落ち着いた親子は、あの日、ゼルガディスの屋敷で別れてからの話を始め ました。とは言っても、父親がアメリアのその後の話を聞きたがったので、彼女が 話して聞かせることが大半でしたが。 「魔剣士は、おまえに酷いことをしたりしなかったかい?」 「そんな!父さん、ゼルガディスさんは、とてもいい人なのよ。 今までみんなが噂で話していたような人とは全然違うんです! 確かに、外見は普通じゃないけれど、噂のように冷酷でも残虐でもないわ。 ……とても、優しい人よ」 「だが、そうは言っても……」 「私のためにいろいろしてくれたのよ。大きな図書室もあるし、大好きなバラの 世話もできるし。それにね、魔法の鏡で父さんの様子を見ることができるよう にもしてくれたのよ。 今回、こうして帰ってこれたのも、その鏡のおかげで父さんが元気がないこと に気付いて、それで、彼が帰るように勧めてくれたくらいだもの」 アメリアは父親の持つ誤解を解きたくて、一生懸命にゼルガディスのことを話しま した。自分が、今とても幸せに暮らしていることをわかって欲しかったのです。 父親には、彼女の言葉に嘘がないことはよくわかったのですが、それでも納得がで きないように言いました。 「だがな、アメリア…近頃町では、こんな噂が流れているのだ……」 口を閉ざした父親をアメリアが促そうとしたとき、バタバタと賑やかな足音と共に 姉たち、、、ナーガとリナが入ってきました。 「アメリアじゃない!あんた、いつ帰ってきたの?」 「姉さんたち!」 「何よ、全然元気そうじゃないの。…誰よ、魔剣士に魔法の実験材料にされたな んて言ったのは」 「じっけんざいりょお……?」 「あんたが自分で言ったんでしょーがっ!人のせいにしないでよねっ!」 「を〜っほっほっほ!そんな昔のことを、この私が覚えてる訳ないじゃない」 「…んなこと、威張るなっつーとるだろうがっ!」(ばこっ) 『あぁ、これこそ我が家……!』 リナのドツキでナーガが倒れるのを見て、しみじみとアメリアは感じ入っていまし た。それに気付いたリナが、ジト目で見ながら話しかけてきました。 「ところで、アメリア。あんた、魔剣士の所から、まさか手ぶらで逃げてきた訳 じゃないでしょうねぇ……。 あたしにお土産のひとつも無いとは言わさないわよ」 「逃げてきたんじゃありません!」 「へ?…じゃ、どうしてここにいるのよ」 「父さんが心配で……、そしたら、ゼルガディスさんが、帰っていいって言って くれたんです!」 「…ゼルガディス、さん…ですってぇ?」 「アメリア…あなた……」 「えっ!?いや、その、私、つまり、あのぉ……(汗)」 ドツキ倒されていたナーガもいつの間にか復活し、リナと共に、ニヤニヤしながら アメリアのうろたえる姿を眺めています。 姉たちの含み笑いに、動揺したアメリアが言い訳をしようとしたときでした。 「いっかーーーーーんっ!!」 姉たちの乱入で、すっかり忘れ去られていた父親が、突然大きな声を出しました。 驚いた3人が顔を向けると、父親は自慢のヒゲを逆立てながら、目を剥いています。 大声には慣れたものでしたが、その表情は、ただならぬものを感じさせたのです。 「父さん、どうしたの?」 最初に口を開いたのはアメリアでした。 父親は、アメリアの手をしっかりと握り、彼女の目をじっと見つめて言いました。 「さっき言いかけた話だよ、アメリア。おまえは知らないだろうが、この間から 町中の噂になっているのだ。……あの魔剣士ゼルガディスのことがな」 「一体どんな噂なんですか?」 「それは……、おまえをあの屋敷に残してから、しばらくした頃のことだ。 札付きの悪党と評判だった盗賊団が、魔剣士の屋敷に押し入ったそうなのだが、 そいつらは、魔剣士一人に皆殺しにされたという話が広まっているのだ。 それも、ただ殺された訳ではなく、口では言えない程の残酷なやり方で…」 「何故、そんな話が……?あの屋敷は、ここからは遠く離れているし、それに、 全員が殺されたというのなら、その話を知っている人なんていないでしょう? 何かの間違いじゃないんですか?」 そう言ったものの、アメリアには、それが事実であることが痛いくらいにわかって いました。が、それ故に、どうしてそれが町に知れ渡ったのかがわかりませんでした。 「話して歩いているヤツがいるのよ」 ナーガが父親に代わって答えました。 「この町では見たことのない顔だから、旅の途中か何かだと思うんだけどね。 黒い神官服着た、おかっぱ頭の変なヤツよ」 「おかっぱ頭の神官?」 「そうだ。……そして、こうも言っている。 魔剣士は、その腹いせに、この町も襲うだろうとな」 「それは嘘です!ゼルガディスさんはそんな人じゃありません!」 「おまえがいくらそう思っていても、町の者はその話を信じている。 現に、町では討伐隊が結成され、近いうちに魔剣士の屋敷へ乗り込むのだ。 お城からも、直属の軍が派遣されるそうだ」 「そんな……!彼のことをよく知りもしないで、その神官の言う言葉だけで、 彼を悪者扱いするなんてひどすぎるわ!」 アメリアには信じられませんでした。まさか、こんなことになっているとは、、。 おかっぱ頭の神官、、それはゼロスだとすぐにわかったのですが、だからと言って 彼女にはその噂を覆すだけの言葉は無かったのです。 「ゼルガディスさんは、そんな人じゃないの!父さん、何とか町の人たちを止め ることはできないの?」 「アメリア……」 父親は困ったようにアメリアを見るだけでした。 できないと言うのは簡単でしたが、そう言うと、彼女は何をするかわからない性格 の持ち主であることをよく知っていたからです。 「落ち着くのよ、アメリア。父さんに食ってかかったってしょうがないでしょ?」 言葉に詰まった父親を助けたのはリナでした。 「あんたが魔剣士……ゼルガディスだっけ?彼のことを信じたいってのは、わか らないこともないわ。でもね、町の人たちの意見ももっともなのよ。以前から 噂になってたのは、あんたも知ってたでしょ?だから、今度のことで、大騒ぎ になるのも当然のことでしょうが。あたしたちが今迄イジメた…もとい、退治 した盗賊たちの中でも、彼のことは怖れられていたわ。噂だけなら、この町ど ころか、国中に広まっていると言っても大袈裟じゃないのよ」 「……」 「あんたにとっては優しいかもしれない。でも、あんたが言うように、本当に彼 がそうなのかは誰も知らないんだもの。今迄の評判からすれば、こうなっても 文句は言えないわ」 「それはそうだけど……。じゃ、どうしてみんなは、ゼロ……おかっぱ頭の言う ことをすんなり信じてるんですか?」 「それが、あたしとしても、ちょっと不思議に思ってるとこなのよね。 確かに、今迄の魔剣士の評判からすれば、悪く思われているのは仕方ないとし ても、ここまで急に話がでかくなるのはおかしいと思う。 ……それに、そのおかっぱ頭のヤツが、何か引っ掛かるのよね…ねぇ、ナーガ」 「ん?そうだっけ?」 どごっ! 「ボケかましてんじゃないわよっ!あんたが最初に言ったんじゃないの!」 「……ったく、手を出す前に口で言えばいいでしょーが!全く凶暴なんだから。 まぁ、いいわ。……つまり、私が思うに、あのおかっぱ頭は怪しいのよ」 「だから、その理由を言えっつーとるだろぉがっ!!」 「ま、まぁ…リナってば落ち着いてよ。そんな変な顔しないで…」 「どやかましいっ!さっさと言わんかいっ!」 リナの形相が変わったのを見て、ナーガは引きつった笑いで話し始めました。 「おかっぱ頭が、町の人に話している所に出くわしたときのことなんだけれどね。 最初はみんな話半分で聞いてたのよ。でも、しばらくすると、まるで魅入られ たように、おかっぱの話に取り込まれてるって感じなのよね。 ……で、その後は、その人がまた別の人に、まるで自分が見てきたように話を どんどん広げてるわけよ」 「そう言うわけ。だからあたしも、何か変だなぁ〜っと思って、そいつから直接 話を聞いてやろうとしたんだけど、どうも避けられてるみたいなのよね」 「私たちからは逃げてるみたいよね」 「まぁ、ナーガから逃げるってのならわかるんだけどね。あんたは他人に避けら れてるって自覚がないだろうけど……」 「を〜っほっほっほ!この私とお近づきになろうなんて、百年早くってよ!」 「そぉいうことを言ってるんぢゃないっ!」 「とにかく、だ!」 際限なく続きそうな姉二人の会話を、強引に中断させた父親は、アメリアに向かい きっぱりと言いました。 「魔剣士の話はもういい。おまえは無事に帰ってきた。それで十分だ」 「父さん!」 「忘れるんだ。……いいな、アメリア」 言い切った父親に、それ以上何も言えませんでした。 彼女には、その言葉の真意がよくわかっていました。アメリアを思う故に、敢えて 非情にも取れることを言わざるを得ない親としての思いを。父親の愛情を強く感じ はしたものの、それ以上に彼への想いが、アメリアの心を揺らしていました。 家に帰ってから1週間が過ぎました。 あれ以来、アメリアがゼルガディスのことを話そうとしても、父親は耳を貸さず、 何事も無かったかのように、昔話や畑のことなどの当たり障りの無い話ばかりを していました。二人きりだったらどうにも間が持たなかったでしょうが、姉たちが 珍しく出かけずに家に居たので、多少ぎくしゃくしてはいたものの、以前に戻った かのような毎日でした。でも、夜ごとにアメリアは滅入る気持ちになりました。 家に帰りたいと言ったときの彼の顔を思うと、胸が締めつけられるようでした。 このまま、父親も説得できず、ゼルガディスにも会えないままになるのではと、、。 アメリアは自分の指にはまった薔薇石の指輪を見つめました。約束の印だと渡され たもの――彼の心の結晶とも言える指輪。 「何とか父さんにわかってもらえなきゃ。……それに、町の人たちにも…」 そう、部屋で考え込むアメリアの耳に、ドアをノックする音が聞こえました。 「アメリア……ちょっといい?」 「あ、姉さん…どうしたんですか?」 ベッドに腰掛けるアメリアの横に、リナが並んで座りました。 「この間のことなんだけど…父さんの言ったことで、あんたが悩んでるじゃない かなって思ってね」 「…でも、父さんの言うことももっともだから……」 「まぁね。…あれでも親だし、あんたのことは、一番可愛がってるしね。 でもね、あんたが父さんに遠慮しなきゃならないことはないのよ」 「姉さん?」 「あんた、あの魔剣士のこと、好きなんでしょ?」 「な、何をいきなり……」 「とぼけなくてもいいわよ。あんたが彼の名前を言ったとき、そんなの、すぐに わかったわよ、ナーガもあたしもね。…ったく、すぐ顔に出るんだから(笑)」 「それはっ、その、あのっ……。(汗)」 「ま、あんたが好きになったくらいだから、ゼルガディスってヤツも、噂ほど怪 しいヤツじゃ無いのかもね。あたしは直接会った訳じゃないから、何とも言え ないけどさ」 「……ゼルガディスさんは、とてもいい人なんです。本当に……」 「あたしとしては、あんたのその言葉を信じるわ。……あたしはね、どちらかと 言えば、おかっぱ頭の神官の方が怪しいと思ってる。 どこがとは言えないけど、あいつは普通の人間と、何か違う気がするのよね」 アメリアは考えました。リナにゼロスのことを言った方がいいのではないかと。 リナならば、アメリアの言葉を信じてくれるだろうし、今後何かあったときにも、 対処できる力がリナにはあると知っていたからです。 「姉さん、その、おかっぱ頭の神官のこと、私知ってるんです」 悩んだ挙げ句、リナに打ち明けることを決心して、アメリアは言いました。 「その人の名前はゼロス。神官なんかじゃなくて、魔族なんです」 「魔族、ですって!?」 仰天するリナに、アメリアは今迄のことを話しました。盗賊たちの襲撃のこと、 ゼロスの謎の行動のこと、そして、ゼルガディスとのことを、、、。 彼女の話に、リナは真剣な表情で耳を傾けていました。いつもなら、茶化したり、 突っ込んだりするはずなのに、今夜ばかりは違っていました。 「……その話が本当なら、そのゼロスってのは、ゼルガディスをどうこうしよう としているわけね。仲間に引き入れようとか何とかで」 「そうだと思います。私もはっきりとは覚えてないのだけど……」 「その通りですよ」 声が聞こえたかと思うと、2人の目の前に、ゼロスが突然姿を現しました。 「ゼロスさん!!」 「お久しぶりです、アメリアさん。この間はどうも」 殺そうとしたのを忘れたかのように、いつもの笑顔を浮かべてさらりと言いました。 「あんたが、ゼロスね?」 「初めまして、リナさん。予々、お名前は、よぉく伺ってましたけれどね」 「そりゃ、光栄だわね。魔族にまで名前が知られてるとは思わなかったわ」 「いえいえ。あなたはなかなか有名人ですよ。僕が最初に上司から指示された相 手はリナさんでしたから」 「どういうこと?」 「でも、僕の見立てでは、リナさんはちょっと手に負えないと思いましてね〜。 それで、ゼルガディスさんに矛先を変えたわけです」 「……手に負えないって、どぉいう意味よっ!」 ゼロスの言葉を聞くや否や、フライングラリアットから、流れるように首絞めに 入ったのは、さすがはリナ!と言うべきでしょうか、、、。 「軽いジョークだったのですが……。 …ったく、リナさんにはまいっちゃいますね〜。ハッハッハ(汗)」 リナの攻撃から何とか逃れて、ゼロスが首筋を撫でています。 「笑えない冗談は、黙ってた方が身のためよ。そんなことより、さっきの答えを まだもらってないわよ」 「そうです!ゼロスさん、魔族のあなたが何をしようと言うんですか!?」 「それは…ゼルガディスさんを僕のモノにすると……」 ぐわしっ!どかっ!ばきっ! 「真面目に言わないと、あんたの明日は来ないわよ。(ジロッ)」 「これだから、魔族は百害あって一利なし!と言われるんですよ!」 「は、はぁ…そうですねぇ。(ポリポリ)さすがは姉妹、攻撃の息がピッタリで…」 「……をい」 「あぁ、はいはい。…つまりですね、僕の上司…獣王様からの命令で、彼を魔族 としてお迎えしようと言うのが最終的な目的です」 「獣王ですってぇ〜っ!?」 「ええ。僕は獣王…ゼラス・メタリオム様にお仕えする獣神官なもので」 「なんだって、そんな大物がゼルガディスさんを狙うんですか?」 「さぁ?僕などには、あの方のお心の全てを推し量ることなど無理ですから。 僕としては、ご命令通りにするだけでして」 「ゼルガディスさんは、魔族になんて、ぜぇっっったい!なりませんっ!! 喩えあなたがどんな手を使おうと、この私が何としても止めてみせますっ!!」 「ア、アメリア…燃え上がるのは後にして(汗)ゼロス、目的はよくわかったけど、 どうしてそのためにゼルガディスの評判をわざわざ落としにかかってるわけ?」 「それは勿論、アメリアさんの存在ですよ」 「へ?私?」 「そうです。せっかく僕が最初に『彼に関わらないでください』ってお願いした のに、アメリアさんてば、しっかりゼルガディスさんと接近しちゃたでしょ? 僕、困りましたよ〜。うまく行きそうだなぁ〜っと言う所でしたからねぇ」 「なんで、アメリアとゼルガディスがくっついたらマズイのよ?」 「姉さ〜ん…そんな、くっついたらなんて……(ポッ)私とゼルガディスさんは、 そんな仲じゃ……」 「顔が赤いですよ、アメリアさん」 「あんたが突っ込んでどーする……(ボソ)」 「ですから、アメリアさんと接近することで、彼が人間らしさを取り戻すのは、 僕にとっては非常に面白くないことなんですよ。何たって魔族ですからねぇ。 『残酷な魔剣士』だからこそ必要なのであって、優しさだの愛情だのと言う感 情は邪魔なだけですからね。その点で、ゼルガディスさんはぴったりだったの ですが、どうもアメリアさんが現れて以来、それが無くなってしまいまして。 だから、こんな面白みに欠ける手段を取らざるを得なくなったんですよ」 「勝手な言い分ね」 「そうですか?」 「そうよ、あんたアメリアを殺そうとしたんだって?」 「おや、よくご存知で。……それが手っ取り早かったんですけれどね。あいにく 失敗しちゃって獣王様に叱られてしまいましたよ」 「そんなことより、今すぐゼルガディスさんのことは諦めてください!」 「それはできません。僕も仕事ですから。 それに、討伐部隊は既に彼の屋敷に着いていますし。僕はそのお手伝いをしに 行きますので、悪しからず…」 「何ですって?そんなに早く動くはずじゃ……」 「この町からはまだですが、城からの部隊はとっくに出てましたからね。 彼等にとって、ゼルガディスさんは魔族としか見えないでしょうから、容赦せ ずに攻め込んでますよ。さて、ゼルガディスさんがどう出てきますかねぇ。 じゃ、僕はこれで……」 「待ちなさい!」 制止の声も虚しく、ゼロスは空に消えました。 「あいつ……わざわざ言いに来るとは、なんつー陰険な…!」 「姉さん!私、ゼルガディスさんの所に帰ります!帰らなくちゃ…!」 「そうは言っても、ここからだと3日、どんなに急いでも2日はかかるわ」 「大丈夫です。ここに来る前にゼルガディスさんに言われてるんです。この指輪 を枕元に置いて眠れば、明日の朝には向うへ帰れるって」 「……へぇ、その指輪、何かあるなぁとは思ってたんだけど、そんな仕掛けにな ってた訳ね。あたしはてっきり結婚の約束でもしてきたのかと思ってたわよ」 「けっ、けっこん〜〜っ!?」 「だって、それ薔薇石じゃないの。まぁ、一般人は知らないだろうけど、あたし くらい知識が豊富だと一目瞭然よ」 「わ、私はそんなこと知らなかったから……。ただ綺麗だなぁってくらいで…」 「あらら、ゼルガディスもかわいそうに。贈りがいがない相手じゃあねぇ」 「でも、そんなこと、言われなかったし……」 「ま、その辺の事情はあんたたちで何とかしなさいよ。 それより今は急いだ方がいいわね。とりあえず、あんたはその指輪の魔法で彼 の所へ帰るのよ。そんでもって、何とか時間を稼ぐこと」 「時間稼ぎですか?」 「そう。ここまで話を聞いた以上、あたしも黙ってるわけにもいかないわ。 カワイイ妹の将来もかかってることだし、魔族相手だったら、思いっ切りやれ るってもんよ!」 「姉さん……どっちが本音?」 「そ、そんなのどっちでもいいじゃないの(汗) それと、父さんにはあたしから上手く言っとくから、あんたは心配しないでい いからね」 「はい…ありがとう、姉さん」 「いいってことよ!じゃ、アメリア、向こうで会いましょ」 そう言ってウインクすると、リナは部屋を出て行きました。 残されたアメリアは、指輪をそっと指から外し、枕元に置きました。淡く光る指輪 を見つめ、ゼルガディスのことを想いながら目を閉じたのでした。 〜その8へつづく〜 |
SS紹介の頁に戻る BACK MENU PAGE |