F式アメリア
   (お疲れ…いや、落ち込み気味のアメリアと、ふてくされたゼルの珍道中の続き)   

   3.正義は急にやめられない

  落ち込んでいるとはいえ、そこは長年身についた習慣、「助けてくれー!」(盗賊に
 襲われた旅人の)という声を聞くともういけない。
  目を輝かせて、あっという間に悲鳴のするほうに駆け出し、(どこが落ち込んでいる
 んだ?どこが!と、あきれるゼル)木によじ登り、前口上。
  「正義の鉄拳を受けてみよ!」 
 が、その後が続かない。魔法がつかえないから地面に激突。(使えても?)
  その上、屈強な大男(盗賊)を前にすると、急に怖くなり、ささっとゼルの後ろに回り
  こんでしまう。(どうしたアメリア、まるで普通の女の子じゃないか)
 ゼル、一瞬ポカンとするが、代わりに受けて立たないわけにはいかない。
   もちろん、ゼルは、あっという間に盗賊どもをなで切り(楽勝)
                                 ∞=@     
   …と、いうパターンを、アメリアのおかげで、道中、何度繰り返させられたことか…
    ついにゼルがキレた。(キレないほうがおかしいぞ)

 ゼル 「 いいかげんにしろ! 自分にできないことに手を出すな!」
  ( 俺は便利なアイテムじゃあない!どれだけコキ使えば気が済むんだあっ )
     と、本当は叫びたいところを、それでも我慢して言ってる)  
 アメ 「(むっとして)ゼルガディスさんこそ、この世の悪を見逃すんですか!」  
 ゼル 「 俺には関係ない!」 
 アメ 「 ゼルガティスさんこそ勝手です!」 
 ゼル 「 ………( 勝手なのはどっちだ! )!」
  (一歩も引かないアメリアと本気で彼女を見捨てていこうかと思うゼル)
 (同時に)  「 「ふんっ!!」 」
    左と右に背を向けて歩き出した.

    4.王子様とお姫様

  一人とぼとぼ、泉の前にきたアメリア。水に映る自分の顔に、ゼルの声が耳にこだま
 する。「 「できもしないことに手をだすな!」 」 (たしかに…魔法が使えないとしても、
 前はどんな大男にだって ―魔族にだって― 素手で立ち向かって行けたのに)
      (私、いったいどうしちゃったんだろう…?) 

 (どこからともなく解説…、それは「とうさん」という魔法が解けたから。
  悪と戦うときは、アメリアは、自分と「とうさん」を同一視していた。
  「とうさん」にできることなら私にもできる、「とうさん」にできることで、私にできない
 はずがない、というのが、彼女の行動原理なので、当然、怖いもの知らずだった。
  しかし、その信頼すべきモデルから、大げさに言えば否定された今、彼女は拠って
 立つ基盤をどこに見出したらいいかわからない。)

 そのとき、後ろの茂みが動く。
 「ゼルガディスさん??」しかしそこに現れたのはムカデのようなモンスター。
 今の彼女は魔法が使えない。(後で思いだしたとき、悲鳴を上げるのと、ゼルが飛び 
  出して来るのは、ほぼ同時に近かったことにアメリアは気づく。)

 それはさながら、お姫様を救うために戦う王子様のような、名場面でした…。

 「 ゼルガティスさん!」
 駆け寄るアメリアに、王子…じゃなかった、ゼルが、刀身を収めながら(自分を心配す 
  るアメリアをいたわるつもりで)言った言葉は…
 「…女なんだから、無理するな 」
 次の瞬間、すごい勢いで ぶちのめされるゼル。
 助けてやったのに、それはないだろうと、怒りかけると、アメリアの瞳に怒りの涙が 
 あふれている。 (ぎょっ!?)
  「ゼルガティスさんに…
   ゼルガディスさんに、私の気持ちなんかわかりません!!」
 (彼女のなりたかったものは、「捕らわれの姫を助けるヒーロー」 だったとか…    
  「 NEXT」1話で 聞いたような気がする…と、うっすら思い出すゼル。
   「 ヒーロー=王子さま=とうさん 」なのは、もちろん言うまでもない。)  
 ( 注)
 1. ゼルをぶったら、ぶったほうの手が痛いはずだと気がついた貴方、そこはそれ、
   拳銃の弾にあたっても、たんこぶで済むアメリアのことなので、都合よく解釈し
   てください。
 2. もしも、王族に女として生まれたのがアメリアの不幸だというのなら、レゾの身内
   に男として生まれたのがゼルの不幸の始まり (「レゾがゼルに呪いをかけた本当
   の理由」…読んだ?)だとは、アメリアは夢にも…思わないだろう。 
   
  「アメリア…」
 彼女の涙に呼応するかのよう降り出した雨。
 とりいそぎ雨を避けるため、無人の狩小屋に二人はかけこむ。
 彼女の髪の中に、さっきゼルが倒したモンスターが死力を振り絞って潜ませた小さな
 蟲がいることをゼルもアメリアも気がつかないまま…。

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