F式アメリア − プロローグ(1ヶ月前の会話) − リナは考えた。コピーレゾを倒したときも冥王フィブリゾと戦ったあとも、ゼルとアメ リアはけっこういい雰囲気になっていたはずだ。 なのに、再び4人が合流するときには、二人の恋愛モードは解除されているよう な気がする。…なんで? そりゃあ、「恋愛」は自分で自分にかける魔法みたいなものだって言うけど、ゼル はともかく (体を元に戻すという目的があるからね)、アメリアは…? 誰か強力な解呪者でもついているんだろうか?…あっ、もしかして… リナ 「あのね、アメリア」 アメリア(以下アメ) 「なんでしょう、リナさん」 リナ 「もしも、もしもよ、フィルさんとゼルが、それぞれガケップチでぶら下がって 助けを求めていたら、あんたどっちを助ける?」 アメ 「(頭の中でSDとーさんと、SDゼルが、ちゃかちゃかと動き回る光景の数 秒後、ピンポーン。) それは、とうさんです ゼルガディスさんは、レイ・ウイングで飛べるじゃないですか」 リナ 「 (…だめだこりゃ) 」 1.なんの日? 例によって例のごとく、アメリアは城の従騎士達と一緒に馬で山道を歩いていた。 「とうさん」の代理として隣国に外交文書を届けた帰りだった。 …そしてまた、いつものパターンで、彼女達は「盗賊キラー」リナの放ったファイヤー ボウルに巻き込まれてしまうのだった。( 説明しなくてもわかるね ) しかしいつもと違うのは、まるでさっき起きたばかりのようなアメリアの顔。 「…ああ、なるほど 」 ピンときたリナは、後からきたゼルをつかまえて、アメリアを 国まで送っていくように命じる。 ゼル 「何で俺が!!俺は自分の体を (以下略) 」(リナに「命じられて」怒る) リナ 「アメリア、ちょっと飛んでごらん?」 リナに言われてアメリアは、力のない声で呪を唱える。 「レイ…ウィ…ング…?」 しかしアメリアの足は地につながれたままだった。 アメ,ゼル(同時に) 「「魔法が使えない?」」 リナ 「ま、そゆうこと」 ゼル 「…そうか、『あの日』か」 ( 赤くなるなよ!) 次の瞬間,アメリアに、はたき倒されるゼル。 アメ 「ち・が・い・ま・す!」(力をこめて) 2.珍道中? ともかくも、ゼルとアメリアは一緒に歩いている。 アメ 「ですから!あの日に限らず、精神的な力が落ちている日や集中力のない 日は、魔法が使えないものなんです」( 釈明・釈明・釈明 ) ゼル 「…(あまり聞いてない)」 アメ 「ほら、『何とかの宅急便』っていう映画にもあったじゃないですか」 ゼル 「…(知るか)」 アメ 「……聞かないんですか?何でそうなったのかって」 ゼル 「別に…誰だっていろいろあるんだろう」 アメリアは (こういうやさしさもあるんだな)と、少し感心する (もしもこれが「とうさん」だったら、心配してあれやこれや大騒ぎだったろうな と、その情景を想像してクスリと笑う。) …と、そこで、自分の落ち込んでるわけを思い出してしまう… それは数日前、城の重臣たちと「とうさん」が話しているのを、聞いたからだった。 「とうさん」が国王になった場合の後継者の指名についてだった。 第3王子は死亡。第2王子は王位継承権放棄。その息子は魔族に殺された。 (皆さん、覚えてますよね?) となると、残る王位継承権は… しかし「とうさん」は小さく呟いた。 「………アメリアが男じゃったらのう」 「( とうさん…!)」 ショックだった。 実はこれは、アメリアには自由に好きなところに嫁いでもらいたい、国のことなど 気にしなくていい(?)と言ってやりたい親心の表れだった。 清く、正しく、たくましく育った娘に、戴冠するに足る能力がないと思っているわ けではないのだが…。 アメリアは聞かなかったふりをした。 「とうさん」のそばにいるときは正義感と使命感と目的意識の3点セットで立派に 公務を果たしていたから、まさか自分が魔法を使えなくなるほどショックを受けて いたとは思いもよらなかった。 アメリア 「…(今になって疲れがでたみたい)」 タメ息 ため息 SIGH …アメリアの周りに漂う縦線のバック… 雰囲気に気おされてゼルがつぶやいた。「暗い…」 彼女が聞き逃すはずはなかった。 「ゼルガティスさんにまで『暗い』って言われるなんて…私はもうお終いです!」 パニックを起こして走り去るアメリアをゲンナリ顔のゼルが見送る。 「あのなあ・・・」 (アメリア、内心ゼルのことを少し見下げ果てたやつだって思っ てたってことだよ、それは。) SS紹介の頁に戻る 3にすすむ MENU PAGE |
F式アメリアのイラストは描き足して全部英語版の各頁の ファイルに貼りつけたので、よかったらそちらも御覧下さい。 |