N ) 廃墟 (「ゼルについて、魂の荒野を行くイメージがある」:(W監督)
レゾのうちの一角には、廃墟がある。
レゾのうちには、彼の病み,もしくは埋めてもらえなかった心の表象として、または滅びの隠喩としての
廃墟がある。そこは花をつけないツル草や雑草に被われてもいる。
レゾの館の北側の一角には、窓枠の残る崩れた壁一枚が張り出した変な場所がある。
かつて館の端の部屋があった場所が、レゾが子どものときに壊れたまま。
そこから館の内部が吹きさらしにならないように、かつて廊下だった所は接ぎをあてたようにふさがれている。
その外には、崩れた壁が残り、かつてそこが部屋だった事を表わす平らな敷石の間から雑草がはびこり、
せめてもの修景用に這わせたバラだったのか、壁面に葉を茂らせている。
物言わぬ植物のための空虚な広間のようでもある。
ちびのゼル「どうしてこんな場所ができたの?」
レゾ 「昔、ここで魔道実験を行い、術が暴走して崩れてしまったんです」
ちびのゼル「 …ふーん?」
…というレゾの説明は正確ではない。そこはレゾが子どもの時、初めて魔法を使った(暴走させた)場所。
それまで自分に魔力容量がある事を知らなかった子どもが、初めて自分の力に目覚めた場所でもある。
子どもの彼が魔法を発動させるに至った話は…また別のところで。