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…我田引水,独断的深読み…その4
ゼルは ほんとうに < 愛されなかった子ども > か?


  男の子が、唯一の肉親にして自分の庇護者であるレゾを、子どもとして、愛さなかったわけはない。社会的、経済的に親に依存しなければ生きていけない子どもが、最初から育ての「 親 」を慕いこそすれ、憎く思うことはない。

             尊敬していた 信頼していた 愛していた
             そして 裏切られた(こんな身体にした!)

  少年がレゾを育ての「 親 」として慕っていれば、いたぶんだけ、それは少年にとって耐えがたい心の傷となる。 そして、自分がレゾを 育ての「 親 」として愛していた記憶を封印する。
 自分はレゾの道具として、利用するために育てられたことを知ってしまった今、すべては屈辱でしかなくなるから。

        同時に、もう一つ封印しなければならない記憶がある。
        彼がかつて <愛された子ども> であった記憶だ。
         
        (愛された? 誰に?)    もちろん レゾに

 (レゾがゼルを愛していた?…としても、それは彼を支配し、魔法(呪い)をかけるための、いわば「壊れた愛」だったんじゃないのか?)

 いや、レゾに引き取られて、長じて魔法をかけられるまでの間、約10年弱?。その間に、アメリアにとっての父ほどではないにしても、魔法をかけられる前のゼルにとって、レゾがまっとうな、生きる上でのモデル( 「親」の役目 )足り得た時期が、わずかかもしれないが、あったと私は思っている。
  なぜそう思うかというと、「NEXT」の中盤からスレを見はじめた私は、最初、ゼルについて、「物心ついた頃から独りで生きてきた一匹狼で、孤高の剣士」という、よくある設定を思い描いていた。

  ついでにいえばあの身体になった理由として
 
 1)元は不良少年で、悪いことをしたので、その罰として
   そしてリナたちと旅するうちに浄化され解放されて良い人間になる? (笑)
   (なんか未来少年コナンのモンスリーを思い出すな )
 2)もとは美形で、王子さま。しかし不遜で高慢だったとかの理由で、ねたまれたか、罰を受けたかして、ああなった(笑) 
   
  などなど、「美女と野獣」のパターンで元の身体に戻るのか、はたまた<貴種流離譚>?とか考えた。

 だから「無印」ビデオを借りて、その理由を知ったときは、軽いショックを受けた。
 彼は、理不尽な魔法をかけられた、しかも「身内」に。この2文字がなければ、私はここまでゼルに拘泥しなかったし、意味付けをしなかったはずだ。
  
 彼が旅をしているのは、世界を救うためでも、囚われの姫を助けるためでも、行方不明の身内を捜すためでもない。自分の身に受けた理不尽な病から逃れるすべを探すため-という個人的な理由だ。あ、誰かに似てる…と思ったら、「もののけ姫」アシタカと同じ。少なくとも、旅立ちの理由は。 (ここから連想して、やっぱりあれは「生きろ」という呪いをかけられたのだと、たどりついた。笑)
  




   話を戻すと、「無印」で え!?と思ったことは、ゼルが「悪の秘密結社レゾー」の(冗談です)幹部(冗談だってば、あ、冗談でもないか )だったことで、しかもレゾから離反した時、彼個人と契約を結んでいてついてくる部下がいたこと。
  うそだろう? <物心ついたころから独りで生きてきたような、人間不信の、孤独な一匹おおかみ> みたいな奴は、他人(ひと)に利用されることは出来ても、他人を配下において指揮したり、動かしたり、利用したりは、出来るはずが ない。と私は勝手に考えている。ましてや、ちゃんと契約を結んだ魔道師と老騎士がいるってことは、それなりにゼルに人望があったわけで…。 これはどういうことだ? 

  つまり、人間関係の基本( 信頼する、されるという関係 )を肉親か肉親の代わりになる相手との間で、子ども時代に築いた経験(学習)、およびそこから得られる自分に対する自信みたいなものがなければ ( 長じてから、他人との間の距離のとり方一つから探って行かねばならないことになるから、それなりに苦労するので )、他人とあのような契約関係を築けるはずがないのだ。

  だから、魔法をかけられる前の時代のゼルにとって、レゾとの間に、信頼関係が結べていた時期が 少しは あったのではないかと思う。
  前述の 3 で書いていることと矛盾して聞こえるのは承知のうえでも。
  レゾが最初から完全に壊れていたわけではないはずだから、まっとうな愛情を注いだ時期も 少しは、あったはずだ。 

  そう言えば、シャブラニグドゥを倒したときも、魔王の中に残っていたレゾの良心が魔王を押さえる力になったとリナが言っている。(今のゼルがそれを信じられるはずはないが)
 だから私は、レゾのそばで、笑ったり手伝いをしたりする男の子がいた、冬の日だまりのような時期が、レゾの良心が男の子を育てていた頃が、少しは あったのではないかとひそかに思っている。
 
  …子どものいいところを見つけてほめてあげたり、一人で遠出して日が暮れても帰ってこない子どもを心配したりするといった、健全な愛情に育まれた部分がなければ、子どもは自分を受け入れてもらった安心感や自信、他人を認める強さを自分の中に築けるわけがない。
  それが大人になったときの生きる力、人と交渉するときの力になるはずだから。

  しかし少年は魔法(呪い)をかけられた。そしてゼルはレゾを憎むために、邪魔な記憶を封印する。信頼していた育ての「親」の所業を、当時の彼には到底理解できないから、精神のバランスを守るために、<愛された記憶>も、意識化に抑圧する。

 だから彼の主観では、自分は 
           <愛されなかった子ども> 
           <利用されるために育てられた子ども>
                         だったということになる。
 
  だから、ゼルが、魔法(呪い)を解くためには、魂の同伴者(彼に気づかせる者)と一緒に自分の記憶(あるいは過去)を旅して、封印を解くことが必要ではないかと、私は思っている。(アストラル・トリップってとこかな?)
 
  彼の中の凝っている涙を解くために。レゾが彼をどんなに愛していたか( どんなに憎んでいたか )を知るために。自分が見たかった世界を守るために滅びてくれたレゾを、ゼルは受け入れなければならない。


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