【元気娘と魔剣士】 その11 <えぴろ〜ぐ> |
この事件の後、4人が家に帰ってみると、町では、魔剣士は討伐軍と共倒れとなっ て死んだという話が広がっていました。一体どこからその情報が流れたのか? 誰に聞いても、皆そうらしいと言うだけで、肝心の出所は謎のままでした。しかし、 王より正式な公布が出され、時の流れのうちに、町の人たちも、魔剣士のことは忘 れ去っていきました。 屋敷を壊されたゼルガディスは、傷が癒えるまでアメリアと2人、彼女の家で過ご しました。勿論、二人きりと言うわけではありませんよ。 リナとナーガに加え、あの父親がいるのです。屋敷にいるときのように、甘い雰囲 気どころか、騒がしさ百万倍という所でしょうか。父親はまだゼルガディスのこと を信用していたわけではなかったので、必要以上に彼と関わろうとはしませんでし たし、ことある事に、アメリアとゼルガディスを離そうとしたりもしました。 でも、娘たち3人の説得と、何より、ゼルガディス自身の人柄を知るにつれ、父親 もわだかまりを捨て、家族の一員として彼を認めるようになりました。 しかし、父親には気になることがひとつだけありました。 とある日のことです。5人が揃って夕食後のお茶を飲んでいたときのことでした。 「なぁ、アメリア」 「なぁに?父さん」 「その、何だ。おまえは今後どうするつもりだ?」 「今後って?」 「いや、だからだな、今までのように、ここでずっと暮らすのかと言うことだ」 「まだ傷が治りきってないから、しばらくはそのつもりだけど」 「ふっ、バカねぇ。父さんの言ってることはそう言うことじゃないわよ」 「へ?」 「父さんも父さんよ。こぉゆぅことは、アメリアに聞かずにゼルに聞かなくちゃ。 この子に言ったところで、わかるわけないじゃないの。ねぇ、ゼル」 「俺に振るな!」 「えっ?えっ?」 「まぁ、順番から言えば、ナーガが一番ってことだけど、こればかりは順序通り ってわけにもいかないもんね。ナーガが嫁に行くのなんて待ってたら、一生か かっても無理だろうし」 「失礼ね。リナの胸がでかくなる確率よりは百万倍は希望があるわよ」 「よ、嫁ぇ〜っ!?」 「わしも、おまえたちが真面目に将来を考えていると言うのなら、頭から反対を するつもりはないのだ。わしとしても、アメリアの花嫁姿は見たい。だが、で きれば、少しでも長く手元に置いておきたいと言うのが正直な所だ」 「父さん……」 父と娘はしっかと抱き合い、親子愛に浸っています。リナとナーガ、それにゼルガ ディスは呆れたように2人を見ていると、やがて、アメリアが父親に言いました。 「心配しないで、父さん。私、ずっとここにいます」 「ちょっとアメリア、ゼルガディスはどうすんのよ?」 「大丈夫です。ゼルガディスさんもここに一緒に暮らせばいいんです」 「お、おい。アメリア…!」 「父さんのことも放っておけないし、姉さんたちの見張りもしなきゃならないで しょ?私がいなきゃ、この家はどうなることか心配ですからね」 「そうは言っても…」 「それに、結婚なんて、まだまだ私には早いもの。しばらくは今のままでいたい んです」 「アメリア…あんたって子は…」 皆が呆れた顔をする中、ゼルガディスだけは納得したように微笑みました。 「まぁ、いいさ、おまえがそう言うならな。但し……」 ゼルガディスの言葉を遮るように、彼に向かってアメリアが左手を伸ばしました。 その指にあったのは、燭台の明かりに煌めく薔薇石の指輪。 「これが約束。…ずっと一緒、でしょ?」 そんなわけで、物語の終わりは、いつもめでたしめでたし。 【おしまい】 |
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