王女様のモノローグ
ときとして
重く感じられるモノは
自分の名前
”――ア・ウィル・テスラ・セイルーン”
血と地位と身分に
課せられる義務と果たすべき約束は
この世界の平和と安寧と秩序の維持
やがて引き継き 護り いつか渡していく
王国の地と民への責任
(それは私の誇り)
神の威光と教えを広く世界の隅々にまで知らしめる使命
神に仕える者として自己の修養と練成に勤めること
あるいは山と積まれた書類
謁見を望む者たちの行列
私に期待される役割 知識 判断力 思考力
王宮に生まれ 育てられた 私の記憶 私の理想 私の理念 私の思い
私をかたちづくるすべてのこと
私が私であるということの重さ
私の枷
彼の腕の中で
纏っていた幾重もの私を脱ぎ捨て
身も心も
生まれも育ちも名前も
恥もプライドも
すべてを奪われ
囚われ
自分を喪う
(自分が自分でなくなることの怖さ?)
いいえ
くびきを解かれ
枷をはずされ
私が私でなくなることの
求め 求められるだけのモノになることの
このうえない悦楽と歓喜